一読の価値ある記事を見つけたので紹介いたします。
こちら↓からの無断転載です。
http://imao-fc.jp/index.php

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考える力をどう育てる
「2010年10月24(日)の愛媛新聞教育を考える」のコラムより

現代の子どもにとってサッカーは野球と並ぶメジャースポーツ。休日の公園や学校の校庭で、子どもたちがコーチの指導を受けている姿は、日常の光景だ。そのサッカーを通じて考える力をど育てるか。30年以上にわたって子どものサッカー指導を続けてきたNPO法人I・K・O市原アカデミー代表の池上正さんに聞いた。(共同通信編集委員・山田 博)

ある幼稚園でのこと。
2列に並んでいた子どもたちが「ピーッ」という先生の笛でさっと4列に並んだ。
先生は、「うちの子は、すごいでしょう」と得意げだ。
そこで、私が笛を吹き
「3列に並んでください」と声をかけた。
そしたら、子どもは、その場に固まってしまい動けない。訓練している4列は、できるが、やっていない3列と言われると途端にできないのだ。

気がつくとどの子も先生の顔をじっと見て指示を待っている。

サッカーでも似たようなことがある。
「右へパスだ」
「そこでシュート」

試合中、大声で指示するコーチの姿は、おなじみだろう。
失敗したり、思うようにできなかったとき、すぐにベンチのコーチの顔色を伺うことのなんと多いことか。
サッカーに限らず、実践では練習したような場面は、ほとんどない。
言われたとおりのことしかできない子が対応できないのは、当たり前だ。
状況の変化に対応するには、子ども自身が自分の頭で考え、判断しなければならない。
なのに何から何まで世話を焼いて、子どもに考える余裕を与えないようでは、伸びようとする芽をわざわざ摘んでいるようなものだ。

小学校低学年のころには喜んでグランドに飛び出した子どもが、学年があがるとだんだんぐずぐずするようになる。
やらされているサッカーでは、楽しいはずもないからだ。
せっかくの才能のある子がやめていく。
指導の厳しいことで知られるコーチ指導者のところでそんなケースが多い。

試合後に、「あれが悪い。これが悪い。」と口で言っても
子どもの耳には、届かない。
それよりも次の練習でまずかった場面を再現し、子どもが自分で考える状況を作る方が理にかなっている。

それがサッカー先進国のヨーロッパ流だ。

日本では、基本が大切だとしきりに言われる。だが、手で投げたボールを胸で受ける型どおりの練習を何度やっても、実際の試合の速く、強いボールには、対応できない。
実践では、仲間の位置を見て、どこにパスするか、どんな強さならつながるか、瞬時に判断する力が求められる。

それには自分で判断する経験を重ねるしかない。

大事なのは、子どもが本当に楽しんでやっているかどうかなのだ。
楽しければ子どもは、真剣になるし、自分で工夫する。それがうまくいけば、益々楽しくなる。仲間と考えた事が成功すれば、最高だ。
失敗したら別のやり方でやればいいと言う感覚も身につく。

おもしろいと思えば、当然勝ち負けにもこだわる。負ければ何がまずかったのか、あれこれ言わなくても、自分たちで考える。

子どもが自分で考えられるような環境を整えるのが大人の仕事だ。

日本では、練習でも試合でも、コーチの指示通りできなかったりすると、責められたり
負けようものなら、罰としてのランニングが待っている事もある。
これでは、心が弾まなくなるのも当然だ。試合で負けて、落ち込む子どもを励ますどころか、何をやっているのかと責め立てる親までいる。

サッカーは、チームスポーツだ。
私の所では、学年の枠をはずし、幼稚園から中学まで一緒に練習する。相手の力を判断して、とりやすいパスを出す。小さな子どものことを考えられる子ほどうまくなる。

多くの人と触れ合い、自ら動くことを通して、人間として成長できるのがサッカーというスポーツだ。
それを多くの大人に分かってほしい。

一口メモ(記者からの)
サッカーでは、瞬時の判断が求められる。ボールを出すタイミング、自分のポジション・・・。
どれも教えられてできるものではない。

「グランドは、教えてもらう場所ではなく、自分で学ぶ所だ。」
と池上さんが言うのも

「子どもが自ら動くことでつかんでいく」ことが基本になるからだろう。
そのエネルギーは、面白さだ。面白いから真剣になる、工夫もする。
こんな言葉に、子どもにとっての学びの道筋は、勉強もスポーツも同じなのだと感じた。

池上さんは、小学校低学年の子の場合、大人のサッカーのような、一人一人のポジション(役割)は、決めずに少人数の4人ずつで試合をさせる。
「小さいうちは、ボールを蹴ってこそ楽しい。決めると全くボールに触れない子も出てくることになる。ボールに子どもが群がるだんごサッカーでいいのです。」
池上さんのような指導者が増えれば、日本サッカーが飛躍する日もそう遠くないに違いない。

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紹介されている池上さんには「サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法」という著書があります。ご興味のある方はどうぞ。